理想とする組織について

概要

私が考える理想的な組織と、組織づくりに必要なことを述べる。

 

組織とは

理想的な組織について考える前に、「組織」とは何なのかについて調べてみた。

『ある目的を目指して、いくつかの物や何人かの人で形成される、秩序あるまとまり』

組織を形成する前提として、共通の目的が必要で、そこに向かって誘導していく働きかけがなければ、組織としては成り立たない、ということである。

 

会社の目的

共通項によって区別された人々が集まって共同生活をする形態のことを「社会」と呼ぶ。「会社」とは、事業活動を通して営利を得ることを目的とした組織のことである。会社が存在する目的は、その過程はどうであれ、最終的に利益を上げる活動を行なっていくことであり、会社に所属する社員は、自分達の行動が会社の利益に結びついているのかを念頭におく必要がある。

当然だが、社会という組織に属する会社は、自分たちの利益を追求するのと同時に、社会に利益をもたらす存在でなければならない。会社が利益を生み出さない社員を排除するのと同様に、会社が社会から排除されてしまえば、事業活動を継続できなくなってしまう。

 

目的は明確であるのが良い

組織に所属する人たちの価値観がバラバラであっても、最終的に目指しているところが同じであれば、そこに秩序が生まれて、組織としてのまとまりが生まれる。

ただし、賛同を得るために万人受けを狙った目的は、ゴールが定まらず、方向性を見失いやすい。

目指すべき目的が明確であるほど、目標も立てやすく、障壁を迂回した際に軌道修正もしやすいと考える。

 

企業理念について

自分達の会社が、社会に対してどのような利益を生み出すのか、目的を明文化して社内外に表明するものを企業理念や経営理念と呼ぶ。会社の目的が事業活動を通して利益を上げることであれば、企業理念は具体的にどうやって利益を上げていくかを示したものであろう。

取引先や仕入先の企業が、企業理念に共感して契約することは稀かもしれないが、採用面や出資の動機には十分なり得る。

組織に所属して欲しい人材、協力を仰ぎたい投資家に向けて、曖昧性を排除したわかりやすい企業理念を作っていく必要がある。

 

理想とする組織について

私が理想とする組織は、所属するメンバーが組織の目的を理解し、組織の利益のために貢献する意欲を持って日々活動している組織である。

組織に貢献する意欲を持たせるためには、エンゲージメントを高めていくための取り組みを行なっていくことが必要であり、そのための前提としては目的を設計し、共有して浸透させていくことが必要である。

 

目的のリファクタリング、リビルド

道を誤らないために目的はブレない方が良いと考える一方で、組織を状況に応じて良い方向に変えたいと考えた時、目的のリファクタリングやリビルドは柔軟に行っても問題ないとも考える。組織形成当初の理念から大きく外れないのであれば、ゴール地点が変わるのも是として、組織に所属する人たちにしっかりと説明して、導いていくと良い。

 

<書評>スモール・リーダーシップ〜チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー

概要

『スモール・リーダーシップ』を読んだ感想と、自分が考えるリーダー像について述べる。

 

はじめに

私がこの本を購入したきっかけについては、はっきりと覚えていないが、翔泳社ECサイトの購入履歴に去年購入した記録があり、おそらくポイントの有効期限切れ間近で何かしら本を購入しようと考えていたことがうかがえる。もしかしたら、どこかのセミナー等で紹介されていたのかもしれない。

 

構成

本書は、以下の7章構成からなる。

 

第1章 スモールリーダーの心構え

第2章 チームに火を入れる

第3章 チームで「正しく考える」技術

第4章 対立は意見を掘り下げるチャンス

第5章 チームの活動を「見える化」する

第6章 問題を解決しながら前へ進む

第7章 仕事が回るサイクルを作り出そう

 

要約すると、

どんなに大きな組織でも、業務を回しているのは現場の数名のチームを率いるリーダーであり、自律的な組織を作っていく上で、リーダーのあるべき姿は、上位下達で押し付けるのではなく、メンバーの自主性を引き出し、信頼関係を築くことが必要である。

チームを育てるために、目的・目標を共有し、腹落ちするまで説明し、時には対立して、メンバーが自分で責任を持って行動できるよう、サポートしていくためのさまざまな手法が紹介されていた。

 

感想

内容としては、どこかで聞いたことのあるものばかりで、目から鱗が落ちるような、はっとした気づきを得ることはできなかった。

それは、私が同じような本を読んだり、セミナー受講をしていたことが要因だろう。

では、なぜ同様のHowTo本、啓発本を購入してしまうのか。

それは、私の中に、まだリーダーとはかくあるべき、という確固とした像を見出していないための迷いがあり、何かしらのヒントや答えを求めているのではないか。

 

ここで、私が考えるリーダー像について明文化してみる。

  • メンバーに安心感を与えるよう気配りをする
  • メンバーの能力を伸ばし、モチベーションを高める取り組みを行う
  • 課題解決に向けた能力や伝手を持っている
  • チームの誰よりも情熱を持っている

リーダーは組織の目的や存在意義を明示し、そこに向かうための目標や工程を、メンバーが自主的、自律的に考えて提示できるように、メンバーのモチベーションをあげていくための役割を果たす存在であってほしい。

自分の考えを押し付け、思い通りに進まない時に頭ごなしに怒鳴りつけていたのでは、メンバーは萎縮して組織は育たない。

 

私がこれまで会ってきたリーダーに、上記をすべて兼ね備えた人はいなかったが、いろいろな人に会ってきて、それぞれに良いところが多くあり、尊敬できる人も大勢いた。

リーダー像かくあるべきという本で謳われているような人物でなくても、現場は回っている。案件や関係者により、どんな働き方を望まれるかは形を変えていく。形が決まっていないので、これで合っているのか、という不安も生まれ、他者の意見に耳を傾けてしまう。

それで、いいじゃないのか。新たに得るものがなくても、今のやり方でだいたい合っていそう、という事実を得られるのなら。

プレゼンのやり方について

概要

『エンジニアのためのプレゼン力向上講座』を読んで、自分がプレゼンを行う上で気をつけていることを振り返ってみた。

書評

『エンジニアのためのプレゼン力向上講座』は、サブタイトルに「客先に連れ出されてしまった」とある通り、プレゼンに慣れていないエンジニア向けHowTo本の類である。

内容としては、エンジニアからの質問に対して著者の経験に基づく回答を行う形式で話が進められている。

私は、社内向けのプレゼンを数多く経験しており、また、客先での提案も行なっていたため、本の内容は特に目新しいことも感じられなかった。

では、なぜこの本を手にしたのか。それは、エンジニア独自の特別なプレゼン方法があるかもしれないという期待と、他の人がプレゼンに臨む上での準備や心構えが自分とどの程度違うのかを知りたかったためである。

結果としては、前述の通り、あまり得るものがなかった。

 

プレゼンの目的

自社製品の紹介であっても、共有したい新技術に対する紹介であっても、基本的なプレゼンの目的は同じだと考えている。話を聞いている人たちに対して、自分が導きたい方向に行動を起こしてもらうため、いかにインパクト・感動を与えられるか。それだけである。

自分がプレゼンを受ける側の立場になったときに、その話を聞いて、何かやろうとする気が起こる内容になっているか。そこを意識して内容を精査していく必要がある。

 

ターゲットの把握

プレゼンを行う上で重要になるのが、プレゼンをする相手のことを把握することである。誰に向けて説明するのかにより、話す内容も変えていく必要がある。人はそれぞれ育ってきた環境が違うので、コンテキストを合わせた表現にしないと、内容を理解してもらえない。

ビジネスサイドの人たちに対して、製品を購入した場合のKPIの向上ではなく、いかに最新の技術を使っているかを説明しても、興味を持たれず、行動の変革も起きない。

だからこそ、一番最初にやることは、ターゲットを把握することである。

 

数字を集める

プレゼン資料を作る上で、具体的な数字を盛り込んだ方が説得感が出る。世間一般ではどんな割合なのか、競合他社はどれくらいの数値なのか、これから提案しようとしている内容との比較に利用する。

私がよく利用するのは、経済産業省厚生労働省がホームページ上で公開している統計情報や、ガートナーやIDCなどの調査会社が発表している情報である。競合他社の数値情報は非公開の場合も多く、公開されている情報の中から推定で数字を割り出しもしている。

基本的には、自分の提案が有利になりそうな情報のみピックアップし、その他の情報は排除していく。嘘をつくことにはならない、と割り切る。

 

プレゼン資料の作成

いろいろなHowTo本に書かれている通り、いきなりスライドを作成するのは、何を伝えたいのか途中で方向性を見失うことも多く、良くない。

私の場合、最初に目次と説明の時間配分を考える。それにより、どのような流れでどれくらいの資料を作れば良いのか見当をつけられる。

次に、各スライドで伝えたいことを一言でメモしていく。基本的に、1スライド1メッセージ、20文字程度に収める構成とする。なぜならば、ミラーの法則にあるように、人が短期的に記憶できる範囲は限られており、長すぎたり多すぎたりするメッセージは、聞き手に伝わらないためである。

資料の構成としては、最初にこのプレゼンで何を伝えたいのか結論を述べ、その後で背景や経緯、根拠を並べ、最終的にまとめとして再度結論を述べる形式をお勧めする。なぜならば、人は結論のわからない話を長々聞かされると苛立ちを感じ、プレゼンが終わった後もその印象を引きずるからである。

記載内容は、グラフなどの図表をメインで記載し、強調したい言葉のみ文字に起して表現する。文章ではなく、イメージで内容を理解してもらう。文字は聞く人の頭には残らない。文字フォントについては、数値など具体的に説明したい文字のフォントを大きく太字で強調すると良い。

配色やデザインについては、SlideShareに公開されている資料を参考にしている。

その他、伝えたいメッセージに沿ったイメージの写真やイラストをフリーサイトから入手して利用している。

スライド数は予定説明時間の1.5倍程度で説明できる分量を用意し、作成後に読み返して推敲し、内容を削っていく。

プレゼンの最初には自己紹介スライドを入れて、ひと笑いのアイスブレイクのネタを考える。適当な嘘や冗談でも誇張でもよい。聞き手と話し手の緊張をほぐすための話を掴みとして入れる。

また、聞き手の集中力を維持するため、質問用スライドを用意しておくのも良い。聞き手に問いかけを行うことで、プレゼンへの参加意識を高めてもらう効果を狙う。

 

発表練習

スライドを作成後、プレゼンを受ける側の人たちの気持ちを想像しながら各スライドで話す内容を原稿に起し、時間計測して実際に声を出して大体の内容を覚えるまで繰り返し練習する。言い回しや間の取り方も意識しながら行うと良い。なお、この時に言い回しが難しかったり、話す順番を変えたほうが良いと感じた場合は、スライドの内容を変更する。

時間に余裕がある場合は、上長や同僚に対してリハーサルを行い、改善点をヒアリングしておくのも良い。

身振りや視線の持っていき方などのジェスチャーについても、聞き手の反応を予想しながらシミュレーションしておく。

いくら練習しても、本番では内容が頭から飛ぶこともあり、話そうとしたことの70%くらい話せれば上出来と考える。こなした場数だけプレゼンは上手くなっていくものなので、とにかく練習する時間を確保する。

 

他者から学ぶ

プレゼンが上手くなるコツとしては、プレゼンが上手い人の話を聞いて、真似をすることである。資料の作り方、話の仕方など、参考になる点も多い。

おすすめは、コミュニティイベントや勉強会に参加して、登壇するいろいろな人のプレゼンを見ることである。その他、youtubeなどで動画を見て研究するのも良い方法である。

 

まとめ

プレゼン力は場数により向上するが、慣れるまでは失敗を恐れず手探りで進めていく他はない。最初のうちはHowTo本の内容を参考にするのも良いだろうが、効果的な向上方法としては、実際に他者のプレゼンを見聞きして、心を動かされたことを自分のプレゼン方法に取り入れていくことだろう。

老舗のあんぱん屋

概要

弘明寺駅付近に、ベーカリーデュークというパン屋があり、そこで販売している「弘明寺あんぱん」の話をします。

 

弘明寺あんぱんとの出会い

今から16年前、弘明寺駅井土ヶ谷駅の間に位置するアパートに住んでいた。その当時は、花見の時期には弘明寺の商店街に桜を見に行ったり、弁当屋のあしなに夕食を買いに行ったり、何かと利用していた。そんな折、デュークにも時々訪れてアンパンを買っていた。

最近になり、近所のスーパーで弘明寺あんぱんが売り出されているのを知り、休みの都度購入するようになった。

 

パンへのこだわり

大学時代に神戸三宮のパン屋でアルバイトしていた。繁華街の中で終電前まで営業しているパン屋には、飲み屋で飲んで帰るお父さんたちが子供たちへのお土産に菓子パンを大量に買って帰ったり、水商売のきらびやかなお姉様方が夜食?に惣菜パンを買って行ったりしていた。営業終了後、店のパンを安く売ってもらい、友達のうちで一緒に食べた懐かしい記憶がある。

パン屋では添加物などを使っていなかったため、市販のパンに比べて非常に美味しく感じられた。時々コンビニでパンを買うことがあったが、薬っぽい味がして不味く感じたものだった。

神戸にあるいろいろなパン屋でパンを買って食べたが、「あんぱん」と「クリームパン」が美味しいパン屋は、他のパンもだいたい美味しい、という教訓を得た。私が初めて訪れるパン屋で、決まってあんぱんとクリームパンを買うのは、この時の思い出が影響している。

 

デュークのパンはどうなのか

デュークは弘明寺あんぱん以外にバリエーション豊富な種類のパンを売っている。あんぱんは、私が学生時代にバイトしていた店に匹敵するくらい美味い。クリームパンや惣菜パンは、まあまあ、といったところか。

昔の思い出は美化されているかもしれないが、それだけ当時の味に感動したのも確かで、また、新商品について創意工夫するパン職人の姿を間近で見ていたのもあり、余計に美味く感じていたのかもしれない。

デュークはそこまで思い入れはないが、あんぱんは美味い。それだけである。

<書評>レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて

概要

『レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて』の読後感想を述べる。

 

はじめに

私がこの本を手にしたのは、2012年のXP祭りに参加した際に書籍コーナーに並んでいたのを目にして、その他の技術書と一緒に購入したのがきっかけである。

10年近く積読していた本書について、本棚の整理も行いたい気持ちもあり、休暇中に読破することにした。

構成

本書は、全10章から構成され、医療現場の研修医に向けた心掛けや対処方法が述べられており、医療以外の分野での顧客やチームとのコミュニケーションにも応用できるノウハウや事例が紹介されている。

要約すると、「コミュニケーションは、相手を叩きのめすためではなく、状況をコントロールするための技術である。そのために必要なことは、事実に対して自分の見解を持つこと、見解を確立するために事実の改変を防ぐととである」ということを述べている。

感想

「第1章 話を聞く」では、患者に対しての心構えを述べているが、チームメンバーへの接し方にも共通したことが言えると感じた。

  • 挨拶をする
  • 目線の高さをそろえる
  • 足の向きをそろえる
  • メモを取る

基本的なコミュニケーション手段だが、自分たちの現場でできているか。出退勤時に挨拶はしているか。相談してきたメンバーに対して、向き合って話をしているか、PC画面を操作しながら話を聞いていないか。相手の話に興味を持っている態度を示しているか。

話をするときに、大衆向けのように面白く語って自分の意見を一方的に伝えていないか。1対1のコミュニケーションでは面白く語る必要はなく、お互いの求める価値について歩み寄り・妥協を引き出して合意することが大事で、歩み寄ってこない人の意見は誰も聞かない。これは、チーム形成するときにも同様なことが言えるだろう。自分から歩み寄って話を聞いてもらえるような土壌を築くことが必要、これはよく言われることだが自分はできているのか。

 

「第2章 問題を受け止める」では、問題点を訴える相手に対しての心構えを述べており、顧客やメンバーに対する対処法に応用できると感じた。

否定することは、問題を解決しない。受け止めて提案する。また、その場でできることをやる。話を中断するときは、相手の状況を想像して、次につながる会話の切り方をすること。

困って相談してきている部下に対して、どうして今まで黙っていたんだ、と否定していないか。相手の問いかけが間違っていた際に、受け止めて別案を提案することなく間違っていることを最初に指摘していないか。面倒臭そうに会話を終了させようとしていないか。

 

「第3章 話を続ける」では、患者との会話で気をつけることを述べている。

話を否定しない、先入観だけで話さない。「多分〜」という言葉を使わない。「私」を主語とすること。これは、部下と上司との会話、評価面談の時は特に注意する点だと感じた。私はこう考える、と述べる。会社がこういう評価をしているので仕方ない、と説明しない。

 

「第4章 分かりやすく説明する」では、相手に理解してもらうための伝え方を述べている。

相手が知りたいことは、理解を超えた詳細なことなのか。細かいことを述べて、相手に意見を述べさせず、煙に巻いていないか。客観的なことだけを述べたり、変に丁寧すぎて逆に伝わらない説明をしていないか。

「会話タグ」を使う方法が紹介されている。電話でのやり取りで最初に「緊急です」「報告です」などタグをつけると、聞いた人が行動しやすい。ぐだぐだと説明されていたら、話の論点がどこなのかわからなくなる。これは、日常のメールや電話連絡でも気をつける点だろう。

 

「第5章 チームを説得する」では、実体験に基づいた同僚に対するメッセージの伝え方が紹介されている。

この中で、「理念を毎日唱えていても、人の行動は変わらない。振る舞いが変わっていくようにしていくことが望ましい」と語られており、いくら高尚な経営理念を語っていても、それが社員たちの行動に紐づくような仕組みを作らないと意味がないと感じた。社外事故を起こさないように気をつけましょう、ではなく、そのためにこういった施策を行っていきましょう、と、具体的に行動できるようにすること。

 

「第6章 医療ミスの起きるメカニズム」では、どういった時に人はミスを犯すのかについて述べられている。

プレッシャーのかかったチームでは、エラー(誤ったこと)を訂正できない。焦っているとろくなことがない。特に、状況判断が必要なリーダーは仕事を抱えすぎず、メンバーに仕事を以上していくことで、心に余裕を持ってチームの舵取りができる。

面白い話が紹介されていた。お寿司屋さんで出前の電話を例に、人は無意識に脳の負担を下げる生き物であり、それを想定して対処しないとミスを起こすよ、という内容である。

具体的には、店員が出前対応する際のマニュアルで最後にワサビの有無を確認していたが、このときの店員の頭には「寿司にワサビはつきもの。ワサビの話題を振ってくるお客様はワサビが苦手な子供がいる家くらいで、相手がワサビについて話を出したら、ワサビ抜きの寿司を作れば良い」という思考回路が出来上がっていた。注文者が最初に「ワサビ入りで」と注文したところ、ワサビ抜きの寿司が出前された。人は労力を使う判断を省略するようにできているとのこと。

仕事は慣れた頃にミスが出やすいのも、こういった人間の性質が影響されているのかもしれない、と感じた。慣れた中でも、ダブルチェック等は必要になる。

 

「第7章 ミスを素早く発見する」では、ミスに気づく瞬間、気づいた時の行動について述べられている。

この中で、一貫した判断基準だけでは現場は回らない、リーダーはその場の状況に応じて場当たり的に判断を下すものだと紹介されていた。プロジェクトを進めていく上で、イレギュラーなことは発生するだろう。それに対して、自分の基準はこうなので、絶対このやり方を押し通す、としても上手くはいかない。案件の背景やメンバーもその都度変わるので、適合するやり方でやれば良い。

 

「第8章 抑止力を運用する」では、感情のコントロールやチームを守るための接遇のやり方について述べられていた。

この中で、「優しい鳩は鷹を生む」という話が紹介されていた。全てのお客様に平等であること。決められた枠組みを抑止力としている中、優しい誰かがその枠を逸脱して過剰なサービスを提供してしまった場合、他の人に示しがつかなくなりプロ失格である。

顧客が価値を感じるのは、期待値を超えた時だというが、超え過ぎるのもやはり良くないだろう。全力を出して150%の成果を出すより、101%で満足してもらい、49%は別の種まきをしていくのが良いだろう。

 

「第9章 謝罪を行う」では、謝罪のタイミングや心構えについて述べられていた。

この中で、「相手の不快感は、謝罪の遅延に2乗して大きくなっていく」、「申し訳ありません、と、私の責任です、の言葉は意味合いが違う」ことが述べられていた。

謝罪はとにかく早く、責任の所在は情報が全て出揃った後に行わないと二度手間になる。ミスや事故を起こした場合にも応用できる。とにかく、相手の感情を鎮めるために早めに謝罪すること。再発防止の策を練った上で責任について述べること。

 

「第10章 交渉外にいる人」では、誠意の通じない人たちと相対した場合の振る舞い方について述べられている。

怒鳴って帰る悪い人はむしろ付き合いやすい。誠実な人たちとの交渉ほど難しい。

この中で、事件現場での交渉人の犯人との交渉術について述べられていた。最初は信頼度0%の状態で、そこから犯人と人質交渉する際、小さな約束でできることから信用を積み重ね51%の信頼を目指すという。100%ではない。顧客との信頼関係も同じだろう。お互いに利害関係は相反する面もあるので、100%を目指すより、健全な相互不信を保った方がうまくいくこともある。距離感が重要ということだろう。

 

まとめ

紹介した通り、本書は研修医向けに書かれた内容だが、顧客やチームメンバーとのコミュニケーションをおこなっていく上での気づきやヒントを与えてくれる内容となっていた。関係性に行き詰まったときに、読み返して参考にしてみよう。

表現者になる祭典

概要

技術書展5に参加した感想を述べる。

 

大人の学園祭

 池袋のサンシャインシティ文化会館で開催された技術書展5に参加した。11時に開始されるため、10分前に現地に到着したが、すでに長蛇の列だった。ニュースで知ったが、当日は1万人以上の来場者がいたそうだ。

並ぶこと30分、ようやく会場に入れた。会場の雰囲気はさながら学園祭のような賑わいだった。入り口に近いエリアから順々に店を巡る人、お目当の同人誌めがけて突き進む人。おっさんエンジニアだけではない。若い女性エンジニアもいる。みんながこの祭りの雰囲気を楽しんでいるようだった。

 

純粋なエバンジェリストたち

技術書を出品する彼らはアーティストではないが、表現者であり、自分が良いと感じたものを伝える伝道師だ。

 彼らを突き動かすものは何なのか。それはきっと、営利目的ではない。金を稼ぐだけであれば本を書くよりも効率の良い方法はあるはずだ。そこにはやはり、自分を認めて欲しいという承認欲求があるのだろう。

書くことだけで言えば、ブログだけでも良いはずだが、あえて製本して形のあるモノとして残し、オフラインで布教をする根底には、人と繋がっていたい、同じ思いを目の前で共有したいという気持ちがあるように感じる。

 

得たもの

今回初めて技術書展に参加したが、いろいろと気づきを得た。本の売り方だが、店先で黙って座って客を待っているより、席から立ち上がって程よいトーンで営業トークをしているブースの本が売れているように見えた。どんなに良い技術でも、相手に伝える努力をしないと、誰も金を出してくれない。

本も2冊、スマートスピーカー関連の本を購入した。彼らの教えを、いずれ他の人たちに伝えていきたい。

社会インフラの脆弱性をDesign For Failureで再考する

概要

天災に弱い日本の社会インフラについて、Design For Failureであり方を考えて見る。

 

 

日本の社会インフラの脆弱性について

 安倍内閣の政策の一つに国土強靭化がある。自然災害が発生しても被害を最小限にとどめ、迅速に復旧するための社会インフラを構築することが目的とされる。

災害対策には、堤防や盛り土などの防災設備や避難設備を整備するハード面の施策と、防災訓練やハザードマップの作成などのソフト面の施策があるという。

今年は、西日本豪雨北海道胆振東部地震、台風21号、24号による天災が立て続けに発生し、甚大な被害をもたらした。特に被害が大きかったのが、西日本豪雨だろう。注意すべきは、堤防が決壊したことによるハード面の問題に加え、住民が避難指示を人ごとと捉えて無視したソフト面の問題があったことだ。

誰しもそうだと思うが、自分を含めた身近な人たちが被害を受けないと、災害とは自分には無縁のものだと思い込んでしまうところがある。かくいう私も、家に防災グッズは常備していない。

もともと日本の国土は山岳地帯と平野地帯の割合が7:3くらいで、山を切り開いたり河川を埋め立てたりして無理やり人が住めるようにしているところも多い。地震もよく発生するので、揺れにより緩んだ地盤に大雨が降れば地すべりや洪水、浸水も発生するだろう。日本は災害大国とも言える。災害は常に隣にいることを我々は意識するべきである。

 

諸行無常

仏教には、諸行無常という考え方がある。世の中の事象は常に変化しており、同じ状態を維持することはできない。

災害対策についても同じで、設備は老朽化する。人の記憶も薄れていく。定期的にアップデートが必要だ。

 

Design For Failureで天災に対峙する

Design For Failureという思想がある。システム設計をしていく上で、障害をいかに発生させないか、というよりも、障害は必ず発生するものだと捉えて、発生した場合にいかに可用性を維持できるかに注力するという考え方だ。

災害は発生するもので、如何ともしようがない。発生した場合に、自分たちの命をいかに守るか、人々に防災意識を根付かせるためのソフト面の施策にはどのようなものがあるか。

エンターテイメント性のあるものが良いだろう。防災訓練についても参加して楽しみがないとなかなか参加してもらえない。ポケモンGOモンスターストライクなどのスマホゲームとのタイアップなど。若者よりも人口の多い中高年を巻き込んでいけるほうが良いだろう。