プレゼンのやり方について

概要

『エンジニアのためのプレゼン力向上講座』を読んで、自分がプレゼンを行う上で気をつけていることを振り返ってみた。

書評

『エンジニアのためのプレゼン力向上講座』は、サブタイトルに「客先に連れ出されてしまった」とある通り、プレゼンに慣れていないエンジニア向けHowTo本の類である。

内容としては、エンジニアからの質問に対して著者の経験に基づく回答を行う形式で話が進められている。

私は、社内向けのプレゼンを数多く経験しており、また、客先での提案も行なっていたため、本の内容は特に目新しいことも感じられなかった。

では、なぜこの本を手にしたのか。それは、エンジニア独自の特別なプレゼン方法があるかもしれないという期待と、他の人がプレゼンに臨む上での準備や心構えが自分とどの程度違うのかを知りたかったためである。

結果としては、前述の通り、あまり得るものがなかった。

 

プレゼンの目的

自社製品の紹介であっても、共有したい新技術に対する紹介であっても、基本的なプレゼンの目的は同じだと考えている。話を聞いている人たちに対して、自分が導きたい方向に行動を起こしてもらうため、いかにインパクト・感動を与えられるか。それだけである。

自分がプレゼンを受ける側の立場になったときに、その話を聞いて、何かやろうとする気が起こる内容になっているか。そこを意識して内容を精査していく必要がある。

 

ターゲットの把握

プレゼンを行う上で重要になるのが、プレゼンをする相手のことを把握することである。誰に向けて説明するのかにより、話す内容も変えていく必要がある。人はそれぞれ育ってきた環境が違うので、コンテキストを合わせた表現にしないと、内容を理解してもらえない。

ビジネスサイドの人たちに対して、製品を購入した場合のKPIの向上ではなく、いかに最新の技術を使っているかを説明しても、興味を持たれず、行動の変革も起きない。

だからこそ、一番最初にやることは、ターゲットを把握することである。

 

数字を集める

プレゼン資料を作る上で、具体的な数字を盛り込んだ方が説得感が出る。世間一般ではどんな割合なのか、競合他社はどれくらいの数値なのか、これから提案しようとしている内容との比較に利用する。

私がよく利用するのは、経済産業省厚生労働省がホームページ上で公開している統計情報や、ガートナーやIDCなどの調査会社が発表している情報である。競合他社の数値情報は非公開の場合も多く、公開されている情報の中から推定で数字を割り出しもしている。

基本的には、自分の提案が有利になりそうな情報のみピックアップし、その他の情報は排除していく。嘘をつくことにはならない、と割り切る。

 

プレゼン資料の作成

いろいろなHowTo本に書かれている通り、いきなりスライドを作成するのは、何を伝えたいのか途中で方向性を見失うことも多く、良くない。

私の場合、最初に目次と説明の時間配分を考える。それにより、どのような流れでどれくらいの資料を作れば良いのか見当をつけられる。

次に、各スライドで伝えたいことを一言でメモしていく。基本的に、1スライド1メッセージ、20文字程度に収める構成とする。なぜならば、ミラーの法則にあるように、人が短期的に記憶できる範囲は限られており、長すぎたり多すぎたりするメッセージは、聞き手に伝わらないためである。

資料の構成としては、最初にこのプレゼンで何を伝えたいのか結論を述べ、その後で背景や経緯、根拠を並べ、最終的にまとめとして再度結論を述べる形式をお勧めする。なぜならば、人は結論のわからない話を長々聞かされると苛立ちを感じ、プレゼンが終わった後もその印象を引きずるからである。

記載内容は、グラフなどの図表をメインで記載し、強調したい言葉のみ文字に起して表現する。文章ではなく、イメージで内容を理解してもらう。文字は聞く人の頭には残らない。文字フォントについては、数値など具体的に説明したい文字のフォントを大きく太字で強調すると良い。

配色やデザインについては、SlideShareに公開されている資料を参考にしている。

その他、伝えたいメッセージに沿ったイメージの写真やイラストをフリーサイトから入手して利用している。

スライド数は予定説明時間の1.5倍程度で説明できる分量を用意し、作成後に読み返して推敲し、内容を削っていく。

プレゼンの最初には自己紹介スライドを入れて、ひと笑いのアイスブレイクのネタを考える。適当な嘘や冗談でも誇張でもよい。聞き手と話し手の緊張をほぐすための話を掴みとして入れる。

また、聞き手の集中力を維持するため、質問用スライドを用意しておくのも良い。聞き手に問いかけを行うことで、プレゼンへの参加意識を高めてもらう効果を狙う。

 

発表練習

スライドを作成後、プレゼンを受ける側の人たちの気持ちを想像しながら各スライドで話す内容を原稿に起し、時間計測して実際に声を出して大体の内容を覚えるまで繰り返し練習する。言い回しや間の取り方も意識しながら行うと良い。なお、この時に言い回しが難しかったり、話す順番を変えたほうが良いと感じた場合は、スライドの内容を変更する。

時間に余裕がある場合は、上長や同僚に対してリハーサルを行い、改善点をヒアリングしておくのも良い。

身振りや視線の持っていき方などのジェスチャーについても、聞き手の反応を予想しながらシミュレーションしておく。

いくら練習しても、本番では内容が頭から飛ぶこともあり、話そうとしたことの70%くらい話せれば上出来と考える。こなした場数だけプレゼンは上手くなっていくものなので、とにかく練習する時間を確保する。

 

他者から学ぶ

プレゼンが上手くなるコツとしては、プレゼンが上手い人の話を聞いて、真似をすることである。資料の作り方、話の仕方など、参考になる点も多い。

おすすめは、コミュニティイベントや勉強会に参加して、登壇するいろいろな人のプレゼンを見ることである。その他、youtubeなどで動画を見て研究するのも良い方法である。

 

まとめ

プレゼン力は場数により向上するが、慣れるまでは失敗を恐れず手探りで進めていく他はない。最初のうちはHowTo本の内容を参考にするのも良いだろうが、効果的な向上方法としては、実際に他者のプレゼンを見聞きして、心を動かされたことを自分のプレゼン方法に取り入れていくことだろう。